横浜の風景

ブログ

2019年7月11日

4つの棘

アイキャッチ画像 考えたこと

開業当時、僕には新しいパソコンを買うお金がなかった。だから修習生の時から6年以上使っていた2万円のノートパソコンをメインでそのまま使うことにした。

侮るなかれ、ThinkPadのEdgeシリーズで、改造が容易だったので、メモリを8GBに拡張してSSDも換装して、エクスピリエンスはグラフィック以外抜群で、爆速に。こういうふうに自分で手を入れていくのが好きなので、高いパソコンが欲しいとも別に思っていなかった。

しかし、Windows7がもうすぐサポート終了するということで、徐々に徐々に綻びが出始め、毎回更新の表示が出るようになり、とうとうなぜかWordも開けなくなったので、買い替えを決意した(僕はいつも一太郎で起案しているのだけれど、仕事をする以上、Wordからはなにかと逃れられない)。

パソコン売り場に行き、ネイビーブルーの色に一目惚れして、富士通のデスクトップ一体型を購入した。基本的に文章が書ければいいので、 高いスペックは求めていないが、それでも、減価償却が必要なくらいの価格のパソコンを買うなんて自分には考えられないことだったので、自分にとっては高級品だ。

早速、壁紙を自分好みに変えることにする。

Unsplash系のフリーの壁紙を色々と検索。「Minimalism」タグでこのバラの壁紙に一目惚れ。即決。他の壁紙から浮かび上がって見えたほど。

よく手入れされた庭に咲き誇るバラたちはとても美しくて、横浜でいうとイングリッシュガーデンや山下公園のバラたちにはハッとさせられるものがあるけれど、こういう一輪の(これはつぼみが2つあるから一輪って言っていいのかわからんけど)バラの美しさはまた別のところにあって。

「星の王子さま」で、地球にはたくさんのバラが咲いていて、それはそれで美しいけれど、人はそれに見向きもしなくて、自分の星にいる、たった一輪の、言葉がきつくて、周りから身を守るために4つのトゲしか持っていないバラは、それでも自分にとってかけがえのない存在なんだということに王子さまが気づくシーンがあったと思う(うろ覚え……違ってたらスミマセン)。

たくさんのバラは、自然の美しさ、エネルギー、生命の神秘を教えてくれる。たった一輪のバラは、まるで心を持った人のように、儚く強くそこにあって、生きることを教えてくれる。

世界から身を守るために、たった4つのトゲしか持たない。愛情は時として安らぎに変わり、時として呪縛に変わる。

綺麗事ではない。バラは綺麗だけれども綺麗ではない。王子さまが幸せなのかはわからない。バラは奔放に見えて孤独だ。

星の王子さまの頃の政治的背景はよくわからないから、作者の真意までは想像もできない。だから僕は人と人の関係レベルでしかこの話に仮託できないけれど、王子さまもバラも寂しかったと思う。

人は、生きることは、とても寂しいことだと思う。でもだからこそ美しくて、喜びがあるのだと思う。

一輪のバラはそんなことを思い起こさせてくれる。

誰もが弱く寂しく、強く儚い。仕事の合間にこの壁紙を見ながら、ふと思う。弁護士は寂しい仕事だ。依頼者の、相手方の、裁判官の、4つのトゲを見抜けるか。

一生かけての課題だ。


saitoyuta
弁護士

横浜・桜木町を拠点に活動する弁護士。5年3か月の勤務弁護士時代を経て独立開業。一児の父。精通分野は交通事故(被害者側)。

私が大切にしていること