横浜の風景

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2019年8月16日

深海

アイキャッチ画像 好きなもの

生まれて初めて万年筆を買ったのは19歳の頃だった。

小さい頃から字を書くことが好きで、ちゃんと字を習ったことはないのでクセはあるけれど、意外に字が上手いのねと周りから褒められると得意になって、 やっぱ字を書くなら万年筆だよなと、茶髪に長髪に革ジャンのいでたちで銀座の伊東屋に行ったのを今でも覚えている。

初めて買ったのはセーラーのリーズナブルな万年筆で、これはこれで書きやすくて今でも大事にとっているのだけれど、先輩が同じものを使っていることを知り、あまのじゃくな僕はなんとなく他のものが欲しくなってしまった。

弁護士になって最初の給料で、家族を食事に招待して、あと少し余裕があったので何か買いたいなと思い、夢だったイタリア製の万年筆を買うことに。

アウロラのオプティマ ブルー。鮮やかな青と金の非常に美しいペン。一目惚れ。しかしキャップになんかラーメンの丼にありそうなマークがたくさん。

「すごく素敵で買いたいんですけど、このラーメンみたいなマークはちょっと……」

「それは古代ギリシャのグレカ・パターンといって」

「買います」

とまあ実に浅はかな消費者だが、物は考えようである。ラーメンの丼を否定するわけではない。

以来、ずっとこの万年筆を使っていたのだけれど、やはり海外製だと日本語の筆記には不向きだなと思う部分があったり、ちょっと作りが粗い部分があるというか、筆記にムラがあって、突然インク漏れしたりもするのでなかなか油断できない(以前相談中に暴発して依頼者様から心配され、それ以来相談ではボールペンを使うようになった)。国内では手に負えなくて本国に発送してまで直してもらったこともある。そういうのも可愛らしいし愛着がわくのだけれど、もっと実用的で、日記に起案のメモに勉強にと幅広く使える国産の上質なペンが欲しいなと思うようになった。

それで、先日、初めて万年筆を買った時と同じ銀座の伊東屋で、このペンを購入した。

パイロットのカスタム743(中細字)。

見ての通りのシンプルかつ地味なデザインで、日本語の書きやすさを追求するために15種類のペン先を用意しているという、まあ日本メーカーの変態的なほどの職人気質(最大の褒め言葉)が遺憾なく発揮された傑作である。

店員さんがとても親切で、同じ見た目の黒いペンを10本くらい出してもらっても嫌な顔一つせず、延々と「永」とか「あいうえお」をニヤニヤしながら書いている変態的な僕を細い目で眺めながら色々とアドバイスをくれる。

それで自分の筆記スタイルに一番ヒットしたこの中細字を買うことに。

で、パイロットといえばインクも変態的にこだわっていて、色彩雫(いろしずく)というシリーズで、綺麗な日本語をつけた美しい色のインクをたくさん出している。

最初はデフォルトのブルーブラックを使っていたのだけれど、パイロットのブルーブラックはアウロラのそれよりもかなり明るくて、もう本当にブルー!って感じ。もっと落ち着いた色が欲しいなと思って、結局行き着いたのがこの「深海」。最初は明るめの青で、そこから短時間で一気に色が落ち着いてきて、深緑のようなニュアンスも広がっていく。書きながら深海に潜っていくような、そんな気分になることができる。この名前をつけた人天才じゃないか。ちなみにミスチルのアルバムでは「深海」が一番好きです(聞いてない)。

ああ、好きなものの話になるとうざったいくらい長くなってしまうな。すみません。


saitoyuta
弁護士

横浜・桜木町を拠点に活動する弁護士。5年3か月の勤務弁護士時代を経て独立開業。一児の父。精通分野は交通事故(被害者側)。

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