横浜の風景

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2021年7月8日

大切なもの

アイキャッチ画像 考えたこと

今回の記事の内容は、書いていいのか少し悩んだけれど、これは自分の矜持のためにちゃんと書かなければいけないと思って投稿することにした。固有名詞はもちろん伏せるが、一切誇張も嘘偽りもない本当の話である。

簡単に言えば、いわゆる広告業者に頼んで大失敗し、けれどそのおかげで大切なものに気づいたという話。

某月。離婚後、今まで以上に仕事に積極的に取り組んでいかなければと思っていたところ、事務所にたまたま一本の営業の電話が入った。
営業の電話は普段全て丁寧にお断りするようにしているのだけれど(営業する側だって電話するときは緊張しているだろうし、断られるのも凹むことだろうから)、その時はなぜか営業の方の話がすっと入ってきて、ちょうど受任を増やしたいなと思っていたこともあったので、不思議と断らずに話を聞いている自分がいた。

聞くと、事務所のGoogleの口コミ評価が高いことが気になっていたらしい。ご依頼者様にお願いするようなこともなければ当然サクラでもなく、この欄は全くいじっていないし、コメントを返したりするとかえってやらせのようになってしまうからあえて何も反応せず、そのままにしていると告げると、何も広告戦略を施していないのにそれはすごい、この評価を生かしつつ、問い合わせが増えるように広告戦略を考えさせてほしい、と言われた。

自分はもちろん非弁提携などの行為は一切行なっていないし、行うつもりも微塵もないが、開業当初、某ポータルサイトの営業を受けた際、すかした営業マンから相談室の椅子や机を褒められ、全部中古ですよと伝えたところ、「いやー、中古で揃える先生は成功しますよ(笑)」とドヤ顔で言われ、お前に何がわかるんだと思いものすごく不快な気持ちになったことがあり、非弁以前に、業者全般に対して、食い物にされるという警戒心を強く持っていた。

けれど心の隙間というのは恐ろしくて、自分も離婚後の焦燥感から、何か現状を打破しないといけないと思いすぎていたのだと思う。思えばあの時のメンタルは正常ではなかったし、業務に支障が出ないようにはしていたものの、内面では限界だった(今ではその経験をしているから限界値は更新されているけれども)。
だから、自分のサイトのイメージやメッセージ性は崩さず、口コミ等も一切いじらず、やらせ的行為も一切しないでほしい、という希望を伝え、それを了解してもらった上で、契約をして、リスティング広告の運用などを任せることにした。

しかし、その後、蓋を開けてみれば、総額50万円はその業者に支払ったが、なんら広告効果はなく、交通事故の新規問合せは一切増えず、むしろ何もいじっていない前の方が多いという有様(50万円は法人の広告料としては全然少額かもしれないが、個人としては大金である)。
もちろん、すぐに結果が出ないこともあるし、信頼しているから結果責任を問うつもりも全くなく、結果が出ないことについては一切不服を言うこともしなかった。それは自分のプライドが許さなかったから。

けれど、ある時、何気なくGoogleの検索結果を確認してみたところ、明らかな自作自演的投稿が発見されて、あれほど手をつけるなと言ったコメント欄にもとってつけたようななんの中身もない、しかも的外れなお礼のレスをつけていることがわかり、僕は膝から崩れ落ちるような衝撃を受けた。当然、すぐに営業の方に伝えて即座に削除させた。

なんてことのない、ただの業者の戦略でしょう、そういうものでしょうと気に留めない人も少なくないと思う。けれど、花咲町法律事務所は僕個人の言葉と人格で成り立っているわけで、そこを離れたところで薄っぺらい言葉を並べられることは、侮辱に等しいし、何よりお客様に対して非常に失礼なことだと感じた。
何よりも、やらないでくれと伝えたことを平気でやってのけられたことに、深い悲しみを覚えた。

支払った金を返せと言うつもりは全くない。僕の支払いでこの業者の社員も給与がもらえて、生活ができて、家族を養えているのだから、それは意味のあるお金だったし、未練もない。
けれど今後関係を続けていくことはできないと思い、あくまで理性的に、双方無駄に感情のリソースを使わないように、かつ、営業の方への感謝の気持ちは伝えつつ、お別れをした。

僕も、割合としては同業の中でも少ない方だとは思うが、力不足ゆえご信頼いただけず辞任に至るケースもたまにある。その時、依頼者の方に対して申し訳ないという気持ちは当然にある。けれど相性は当然あるし、僕は誰とでもうまくやれる人間ではないし、というか人間皆そうだし、ご信頼いただけないまま続けても、双方にとってよくないから、そういう時は、最後まで依頼者の方へのリスペクトは忘れずに、お別れするようにしている。

経営をよくしようと思って依頼した業者のためにかえって経営がキツくなってしまったのだけれど、これは自分にとって必要な経験だったと思っている。50万円は今後の勉強料としてはむしろ安いくらいだと思うようにしている。

なぜなら、自分にとって本当に大切なものに気づけたから。

自分は自分の言葉と振る舞いと誠意で、弱っている人、辛い状況に置かれている人の心の支えになりたくてこの仕事をやっているのだ。もちろん人間だから体力的・精神的・時間的限界はあるし、いつでもどこでも特定個人に寄り添うことはできない。その辺は折り合いだけれども、自分はそんなトレードオフも、自分自身が成長してベースを向上させながら止揚的に乗り越えていきたいと強く思っている。

広告は大切だ。以前勤めていた法人では、広告のおかげで知り合えた方々がたくさんいて、そのご縁が今に繋がっていることも多い。だから広告を否定するつもりはないけれど、自分は、広告を打ち出すにしても、今後も、細々ひっそりと、自分の言葉で、自分のできる範囲で、やっていきたいと思った。それはこれからも変わらない。

一人でやるのは非効率だとか、人にうまく頼める人が成功するだとか、ビジネス書には書いてあるけれど、それはその人たちの正解であって、僕の正解じゃない。

僕はありのままの僕のまま、そのままご縁のある方と向き合っていくのだ。僕の美点にだけ注目するお客様には、申し訳ないけれどそのぶんダメな部分もあるし、できる限り尽力するけれど期待に添えない部分もあると正直に伝える。

これは人間と人間の問題だ。AIが介入する問題ではない。もちろん、デジタルデバイスの恩恵は自分はかなり受けている方だし、使いこなしている方だと思うから、時代に乗り遅れているわけではない。けれど結局はありのままの、今ここにいる自分で常に全力で向き合って、けれども現状の自分に甘んじないで成長していくしかないのだと思う。

なぜ安定した収入と立場を全て投げ出して独立開業したのか、改めて自分に問い直す時が来ている。

日々のご縁に感謝。


saitoyuta
弁護士

横浜・桜木町を拠点に活動する弁護士。弁護士8年目。5年3か月の勤務弁護士時代を経て独立開業。精通分野は交通事故(被害者側)。水瓶座O型。

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